こんにちは。シーナと申します。
「日商簿記2級」の受験を目指している私が、復習のために「日商簿記3級」の勉強を始めた時に感じた疑問や勉強したことを纏めていくシリーズです。
今回は、第5問の「精算表」と「財務諸表」に高頻度で出題される収益と費用の「繰延(繰り延べ)」の仕訳についてです。
これから簿記3級を受験するあなたの参考になれば幸いです。
- はじめに
- 収益と費用の繰延とは
- 費用の繰延の覚え方
- 収益の繰延の覚え方
- 覚え方のポイント纏め
- 費用の繰延の仕訳の考え方
- 収益の繰延の仕訳の考え方
- 前受収益、前払費用はいつ使う?
- 考え方、覚え方のポイント纏め
- 仕訳が苦手なあなたに
- 終わりに
- 関連記事です。
はじめに
第5問の「精算表」、「財務諸表」で高頻度で出題されるテーマ。
決算時における「収益と費用の繰延」について、基本的な考え方と仕訳について紹介します。
実際の試験問題を解くためには、まずこの考え方を理解する必要があります。
似たような勘定科目が頻出しますので、仕訳は暗記せずに考え方を理解してください。
なお、「収益と費用の見越し」については、以下の記事で紹介しています。
再振替仕訳を踏まえた実践編は以下の記事で紹介しています。
なお、第5問の「精算表」と「財務諸表」問題について、全体的な解き方については以下の記事をご確認ください。
なお、第2問もしくは第4問の出題テーマの一つ「勘定記入」を解く上でも必要な内容です。
こちらは必ず出題されるわけではありませんが、ここ最近の出題頻度は割と高いです。
配点は10点と低いのですが、繰り延べと一緒に、しっかり理解しておきたいところです。
別記事で解き方を紹介したいと考えています。
収益と費用の繰延とは
決算時に当期分の収益や費用だけを処理し、来期分の収益や費用を繰り越す処理のことです。
なぜこのような処理が必要になるかというと仕訳のルールが関係します。
仕訳は取引が発生した時に行います。
そのため費用は支払った時、収益は受け取った時に必ず全て仕訳する必要があります。
生活上のことを思い出してみてください。
費用は大体、前払いですよね。
それも半年や1年分を前払いするということもよくあると思います。
例えば、保険料は(少なくとも簿記試験上は)絶対に前払いになります。
後から保険料を支払うということはありえません。
何かが起こってから支払うのでよければ、誰でもそうします。
(現実では未払保険料はありえます。大変なデメリットを受けますけどね。)
収益は普通は馴染みが無いと思いますが、費用と考え方は同じです。
単に立場が逆になるだけ(支払う側か受け取る側かの違い)です。
そして損益計算書や貸借対照表には当期分のみを記載します。
費用は支払った時、収益は受け取った時に当期分だけ仕訳し、来期にまた仕訳すればよいと考えるかもしれません。
しかし、それは取引が発生した時に仕訳するという簿記のルールに反します。
来期にはその取引自体は既に終わっていて、取引が発生しませんよね。
そのため、次期分の収益や費用は次期分として、決算時にしっかりと処理する(繰り越す)必要があります。
スポンサーリンク
費用の繰延の覚え方
まずイメージしやすいと思われる費用の繰り延べについて、説明します。
前もって支払う費用ですので、仕訳の勘定科目は「前払費用(まえばらいひよう)」になります。
前もって支払っている費用ですので、仮に決算のタイミングで、その取引を止めたらどうでしょう。
残りの期間分の費用は戻ってきます。
(現実にはそうでないケースもありますが、簿記試験では考えなくて大丈夫です)
お金が戻ってきますので「前払費用」は「資産」の勘定科目になります。
費用なのに資産という点がこんがらがる要因と思いますが、暗記ではなく上記のように考え方が分かっていれば、間違えにくいのではないでしょうか。
収益の繰延の覚え方
費用の場合と考え方は同じです。
前もって受け取っている収益ですので、仕訳の勘定科目は「前受収益(まえうけしゅうえき)」になります。
前もって受け取ってしまっている収益ですので、仮に決算のタイミングで、その取引を止められてしまったらどうでしょう。
残りの期間分の収益は相手に返却しなければなりません。
(現実にはそうでないケースもありますが、簿記試験では考えなくて大丈夫です)
お金が出ていきますので「前受収益」は「負債」の勘定科目になります。
収益なのに負債という点がこんがらがる要因と思いますが、暗記ではなく上記のように考え方が分かっていれば、間違えにくいのではないでしょうか。
覚え方のポイント纏め
決算時点でその取引を止めたらどうなるか?
この考え方を覚えておきます。
お金が戻ってくるなら資産、出ていくなら負債です。
それでは実際に仕訳を見ていきます。
スポンサーリンク
費用の繰延の仕訳の考え方
以下の状況を想定します。
シーナ商店は、2018年11月1日に保険料(1年分)の12,000円を現金で支払った。
まずは、支払った時に仕訳を行いますので以下になります。
保険料12,000 |現金12,000
この仕訳はよいですね。普通の仕訳です。
費用の勘定科目である「保険料」で処理します。
(なお、「支払保険料」とも書きます。これはどちらも同じ意味ですので、問題文の指示に従います。)
さて、2018年12月末日になり、決算処理をすることになりました。
結論から言いますと仕訳は以下のようになります。
前払保険料10,000 |保険料10,000
まず、1ヶ月分の保険料を計算します。
1年分(12ヶ月分)で12,000円ですので、1ヶ月1,000円です。
そして、11月に1年分(12ヶ月分)の保険料を支払っています。
12月末までは何ヶ月でしょう。
ここで12-11とすると間違えます。
11月、12月で2ヶ月分です。
今は当たり前だろうと思われると思いますが、実際の試験では間違えやすいポイントです。
ここは面倒でも、11,12と指折り数えましょう。
私は数えました。確実が一番です。
また、以下のような線?図?を描くとさらに確実になります。
この例では不要ですが、実際の試験では再振分仕訳という観点も加味されます(これは別記事で紹介します)ので、この図を描く癖をつけておくと確実に解けるようになります。
さて、当期分(2ヶ月分)は費用として(確定しています)処理し、来期分(10ケ月分)は資産として処理します。
すでに費用として「保険料」勘定科目に12,000円を計上していますので、確定している2ヶ月分(2,000円)が残るように差し引きます。
そして、来期分の資産として新たに「前払保険料」に10ヶ月分を計上します。
そのため仕訳は先ほどの通り、以下のようになります。
前払保険料10,000 |保険料10,000
実際の出題は、こんなに切りのよい数字ばかりではありません。
なお、仮に11月15日に支払っていても月割です。
日割で計算することはありません。
仮に日割する場合は、問題文に指示があります。
===追記ここから===
少し話がそれますが、保険は途中解約することもありますよね。
途中解約するパターンの出題が第150回で初めて出題されました。
問題文にどう処理すればよいのか丁寧に(前払した保険料が未経過分が月割で返金されるので、その分は未収入金として振り替えると)記載されていますので、よく読めば解ける問題ですが、解約することもあるということは覚えておきしょう。
決算の後に解約してくれとは思いますが、試験ですから。
ポイントは同じです。
焦らずに戻ってくる金額がいくらになるのか、
経過月数を指折り数えて対応しましょう。
===追記ここまで===
収益の繰延の仕訳の考え方
以下の状況を想定します。
シーナ商店は、2018年12月1日に家賃(半年分)の12,000円を現金で受け取った。
家賃収入。憧れますね。
まずは、受け取った時に仕訳を行いますので以下になります。
現金12,000 |受取家賃12,000
この仕訳はよいですね。普通の仕訳です。
収益の勘定科目である「受取家賃」で処理します。
さて、2018年12月末日になり、決算処理をすることになりました。
結論から言いますと仕訳は以下のようになります。
受取家賃10,000 |前受家賃10,000
まず、1ヶ月分の家賃を計算します。
半年分(6ヶ月分)で12,000円ですので、1ヶ月2,000円です。
そして、12月に半年分(6ヶ月分)の家賃を受け取っています。
12月末までは何ヶ月でしょう。
ここで12-12とすると間違えます。
(さすがにこれは間違えませんね。無理がありました。)
12月で1ヶ月分です。
ただ、面倒でも、12と指折り数える癖をつけておきましょう。
図にすると以下のようになります。
この例では不要ですが、実際の試験では再振分仕訳を考慮する必要があるため、図を描く癖をつけておきましょう。
さて、当期分(1ヶ月分)は収益として(確定しています)処理し、来期分(5ケ月分)は負債として処理(ここで解約されたらせっかく受け取っていた家賃を返却する必要があります)します。
すでに収益として「受取家賃」勘定科目に12,000円を計上していますので、確定している1ヶ月分(2,000円)が残るように差し引きます。
そして、来期分の負債として新たに「前受家賃」に5ヶ月分を計上します。
そのため仕訳は先ほどの通り、以下のようになります。
受取家賃10,000 |前受家賃10,000
なお、収益も月割です。
日割で計算することはありません。
仮に日割する場合は、問題文に指示があります。
前受収益、前払費用はいつ使う?
さて、仕訳を見てきましたが、「前受収益」、「前払費用」の勘定科目は出てきません。
これらは外部に公開するための財務諸表(損益計算書や貸借対照表)で使用します。
内部向けである精算表内の損益計算書や貸借対照表とは、以下のように変わります。
前払○○ => 前払費用
前受○○ => 前受収益
個別の「前受○○」、「前払○○」を纏めるものが、「前受収益」であり、「前払費用」となります。
実際の試験では、財務諸表の勘定科目が空欄になっていて、記述させる穴埋め問題が出題されることがありますので、しっかり覚えておきましょう。
考え方、覚え方のポイント纏め
決算のタイミングで、その取引を止めたらお金が戻るのか、出ていくのか。
戻れば「資産」、出ていけば「負債」。
繰り返しとなりますが、この考え方を覚えておくとよいです。
それと何ヶ月分かは指折り数える。
この2つを覚えておけば大丈夫です。
仕訳が苦手なあなたに
どうしても仕訳が苦手という方、特に学生や社会人になったばかりの人は、商取引の(掛取引などの)イメージがしにくいと思います。
これは仕方がありません。
そのような時は以下の書籍がおすすめです。
前述の過去問題集を出版しているWeb型予備校「ネットスクール」の代表である
「桑原 知之」氏の著書
「脳科学×仕訳集 日商簿記3級 (合格するにはワケがある)」です。
仕訳集とありますが、仕訳だけではなく、簿記自体の考え方を学べます。
私の簿記の考え方はこの本に基づいています。
2021年3月に第3版が販売されています。
価格は2021年4月現在で1,320円(税込)です。
仕訳の仕組みから理解できますし、出題実績の高い順番に説明されていますので、効率よく簿記3級に必要な知識を学ぶことができます。
ちなみに掛取引とは後払いのことです。
波平がよく飲み屋の支払でしていたやつ(ツケといて!)と仕組みは同じです。
(最近テレビを見ていませんので、もうしていないかもしれませんが。)
企業間の取引は掛取引が基本です。信用商売ということですね。
終わりに
あなたの参考になれば幸いです。
それでは、また。
関連記事です。
過去問題集を解くことが合格への近道です。私も使用したおすすめの過去問題集です。
「減価償却費」同様、第5問の精算表で高頻度で出題される「貸倒引当金」の解き方です。
同じく第5問の精算表で高頻度で出題される「売上原価」の解き方です。
日商簿記3級で使用する勘定科目の一覧を纏めました。
第1問の「仕訳問題」への対応方法、解き方のコツの紹介です。
第5問と同じ配点である第3問について具体的な解き方の紹介です。
試験全体について攻略法と問題毎の時間配分についても紹介しています。
必要になる勉強時間や試験範囲の改定について紹介しています。
簿記試験に必須の電卓について、おすすめとテクニックを紹介しています。
試験までの段取りと前日、当日の過ごし方、タイムスケジュールも紹介しています。
間違えやすい誤字脱字を紹介しています。