こんにちは。シーナと申します。
「日商簿記2級」の受験を目指している私が、復習のために「日商簿記3級」の勉強を始めた時に感じた疑問や勉強したことを纏めていくシリーズです。
今回は、第5問の「精算表」と「財務諸表」に高頻度で出題される
「売上原価」の仕訳についてです。
これから簿記を受験するあなたの参考になれば幸いです。
- はじめに
- 売上原価とは
- 前提となる三分法とは
- 決算時の仕訳処理
- 売上原価の計算式
- 売上原価の計算方法(求め方)
- 精算表での売上原価の計算方法、求め方
- 財務諸表での売上原価の計算方法、求め方
- 過去問のすすめ
- おすすめ過去問集の理由
- 出題範囲は再確認しましょう
- 仕訳が苦手なあなたに
- 終わりに
- 関連記事です。
はじめに
第5問の「精算表」について全体的な解き方、求め方を紹介している以下の記事を
先にご確認ください。
売上原価とは
当期に売上げた商品の仕入原価のことです。
この当期に売上げたという点がポイントです。
起業1年目であれば、仕入原価は「仕入」勘定科目とイコールになります。
しかし、2年目以降では前年に仕入れた商品が在庫として期首には存在しています。
この在庫が「繰越商品」勘定科目になります。商品ですので、資産の勘定科目です。
期首に存在する商品(在庫)も当期に販売して売上に含まれますので、売上原価は前年の仕入も考慮する必要があります。
前提となる三分法とは
商品売買を「仕入」、「売上」、「繰越商品」の3つの勘定科目を使用して処理します。
商品倍内取引を3つに分けて管理する方法なので、三分法と呼びます。
「売上」勘定科目は、販売価格(原価+利益)です。
この方法のメリットは、商品の販売時に毎回原価を調べなくてよいため、多種多様な商品を
大量に取引する際に適しています。
日商簿記3級では基本的に商品に関しては三分法が使用されます。
決算時の仕訳処理
決算時には当期の商品販売益(いわゆる売上総利益、粗利)を算出する必要があります。
そして商品販売益は、売上高(売上)から売上原価を引くことで求められます。
売上原価を計算しないと、正しい利益が分からないということになります。
毎日は計算しなくてよい代わりに決算時には計算する必要があるということです。
売上原価の計算式
売上原価=期首商品+当期仕入ー期末商品
この計算式がすべてです。
前年に仕入れた在庫と当期に仕入れた分から期末に残った商品残高を差し引くことで、
売上原価が分かります。
決して、「仕入繰商、繰商仕入」などという呪文ではありません。
売上原価の計算方法(求め方)
計算式は前述のとおりですが、仕訳で求める方法には2パターンあります。
どちらかが試験に出題されます。どちらも解けるようにする必要があります。
実際の試験での求め方、解き方は後述しますが、まずは考え方を確認してください。
もちろん、どちらの方法でも結果は同じです。
前提
説明上、Tフォームが出てきます。
Tフォームについては、以下の記事で紹介しています。
Tフォームは他の問題を解く上でも非常に重要ですので、一度ご確認ください。
説明する上での決算時の状況は以下とします。
当期の「仕入」:1,000円
期首の商品棚卸高(繰越商品勘定の残高):300円
期末の商品棚卸高:500円
「仕入」勘定科目を使用する場合
すでに存在する「仕入」勘定科目を利用します。
登場する勘定科目は、「仕入」と「繰越商品」です。
先の「前提」からそれぞれの勘定口座は以下の状態になっています。
仕入の支払方法(以下では買掛金)は説明上関係が無いため適当です。
「繰越商品」勘定口座(科目)は決算時にしか動きません。
「仕入」勘定の借方(左側)にある当期の仕入に期首の商品棚卸高(繰越商品)を加えて
当期の商品総額(期首商品+当期仕入)を求めるために以下の仕訳を行います。
仕入300 |繰越商品300
それぞれの勘定口座は以下の状態になります。
「繰越商品」勘定口座は一旦0になります。
次に商品総額(期首商品+当期仕入)から期末の商品棚卸高を差し引くために
以下の仕訳を行います。
繰越商品500 |仕入500
それぞれの勘定口座は以下の状態になります。
以上で「仕入」勘定口座には「売上原価」分だけが残高として残っていることになります。
そして「繰越商品」勘定口座には期末の商品棚卸高である「次期繰越」分が残っています。
売上原価を求めるのは決算時です。決算時に残った商品は次期に繰り越します。
そして次期の「繰越商品」勘定口座(科目)には、「前期繰越」として計上されます。
以上で「仕入」勘定科目を使用する場合は完了です。
仕訳だけ抜き出すと、
仕入300 |繰越商品300
繰越商品500 |仕入500
となります。
みんな大好き「仕入繰商、繰商仕入」ですね。
ちなみに実際の試験では期末の商品棚卸高(当期の在庫)は問題文で明示されます。
明示されないと我々には分かりようがないですからね。
「売上原価」勘定科目を使用する場合
こちらの方法は、新規に「売上原価」勘定科目を作って計算します。
こちらの方が考え方は分かりやすいかもしれません。
専用の口座を作って、そこで計算します。
登場する勘定科目は、「売上原価」と「仕入」、「繰越商品」です。
「売上原価」勘定口座は空の状態です。
「仕入」、「繰越商品」勘定口座は以下の状態です。
こちらは先ほどの「仕入」勘定で計算する場合と同じですね。
まず、期首の商品棚卸高(繰越商品勘定の残高)を売上原価の借方に移します。
仕訳は以下になります。
売上原価300 |繰越商品300
「売上原価」、「繰越商品」勘定口座は以下の状態です。
次に当期の「仕入」を売上原価の借方に移します。
仕訳は以下になります。
売上原価1,000 |仕入1,000
「売上原価」、「仕入」勘定口座は以下の状態です。
最後に売上原価勘定口座にある商品総額(期首商品+当期仕入)から期末の商品棚卸高を差し引くために以下の仕訳を行います。
繰越商品500 |売上原価500
それぞれの勘定口座は以下の状態になります。
これで「売上原価」勘定口座には「売上原価」分だけが残高として残っている
ことになります。
そして「繰越商品」勘定口座には期末の商品棚卸高である「次期繰越」分が残っています。
一応ですが「仕入」勘定科目は0になります。
以上で「売上原価」勘定科目を使用する場合も完了です。
仕訳だけ抜き出すと、
売上原価300 |繰越商品300
売上原価1,000 |仕入1,000
繰越商品500 |売上原価500
となります。
最初に売上原価に商品総額を入れて、期末商品棚卸高を引くということですね。
ここまでで基本的な考え方の説明は終了です。
それでは以降で実際の試験での求め方を紹介します。
第5問の試験では仕訳やTフォームを書いていては時間が掛かって仕方ありません。
精算表での売上原価の計算方法、求め方
精算表の場合は、修正記入欄がありますので、修正記入欄を利用します。
厳密には利用せざるを得ないというところです。
後述する財務諸表の場合の求め方が一番簡単です。
「仕入」勘定科目を使用する場合
第147回の問題を例にとって説明します。
日商簿記3級第147回問題文より引用。
5.期末商品棚卸高は¥189,000である。売上原価は「仕入」の行で計算する。
出典:日商簿記3級平成28年度第147回簿記検定試験問題用紙
答案用紙の精算表は以下のようになっています。
関係する部分だけ抜粋します。
「仕入」の行で計算しますので、当期の「仕入」に期首の商品棚卸高である「繰越商品」を
入れます。
精算表は以下のようになります。
※修正記入欄(に限りませんが)は必ず貸借が一致します。
貸方(or借方)に226,000円記入すれば、必ず貸方(or借方)で226,000円が記入されます。
このルールを覚えておけば精算表は簡単になると思います。
次に問題文より期末商品棚卸高は189,000円です。
次期繰越となりますので「繰越商品」の借方に、期末商品を引くために「仕入」の貸方に
それぞれ入れます。
精算表は以下のようになります。
後はそれぞれの行を計算して損益計算書、貸借対照表欄を完成させます。
精算表は以下のようになります。
念のためですが、実際の試験で上記の赤斜線は書かなくてよいです。
「売上原価」勘定科目を使用する場合
第143回の問題を例にとって説明します。
日商簿記3級第143回問題文より引用。
(1)期末商品棚卸高は¥38,000である。売上原価は「売上原価」の行で計算すること。
出典:日商簿記3級平成24年度第143回簿記検定試験問題用紙
答案用紙の精算表は以下のようになっています。
関係する部分だけ抜粋しています。
「売上原価」の行で計算しますので、期首の商品棚卸高である「繰越商品」を
「売上原価」に入れます。
精算表は以下のようになります。
※修正記入欄(に限りませんが)は必ず貸借が一致します。
貸方(or借方)に41,000円記入すれば、必ず貸方(or借方)で41,000円が記入されます。
このルールを覚えておけば精算表は簡単になると思います。
次に「売上原価」の行で計算しますので、当期の「仕入」を「売上原価」に入れます。
2行必要になりますので、「貸倒引当金繰入」との間に予め1行が空いています。
精算表は以下のようになります。
次に問題文より期末商品棚卸高は38,000円です。
次期繰越となりますので「繰越商品」の借方、期末商品を引くために「売上原価」の貸方に
入れます。
精算表は以下のようになります。
後はそれぞれの行を計算して損益計算書、貸借対照表欄を完成させます。
精算表は以下のようになります。
念のためですが、実際の試験で上記の赤斜線は書かなくてよいです。
いかがでしょうか。
精算表の場合は修正記入欄のルールを上手く使うことで簡単になるのではないでしょうか。
ただ、このやり方に慣れると修正記入欄が無くなる財務諸表で売上原価が解けなくなります。
実際はこれから説明する方法が一番簡単ですので、両方できるようになりましょう。
財務諸表での売上原価の計算方法、求め方
精算表にあった修正記入欄はありませんが、問題ありません。
第149回の問題を例にとって説明します。
(1)決算整理前残高試算表
日商簿記3級第149回問題文より関係するところだけ手書きで抜粋しています。
(2)決算整理事項等
日商簿記3級第149回問題文より引用。
5.期末商品棚卸高は¥203,000である。
出典:日商簿記3級平成30年度第149回簿記検定試験問題用紙
これだけです。
さて、売上原価の計算式を思い出してください。
売上原価=期首商品+当期仕入ー期末商品
ですね。
以下のように十字を書いて数字を入れて計算します。
反時計回りの動きがポイントです。
期首商品|売上原価
ーーーー+ーーーー
当期仕入|期末商品
期首商品=繰越商品=180,000
当期仕入=仕入=2,200,000
期末商品=期末商品棚卸高=203,000
です。
決して、「仕入繰商、繰商仕入」などという呪文を覚える必要はありません。
いかがでしょうか。非常にシンプルで簡単ではないでしょうか。
後はひたすら問題を解きましょう。
過去問のすすめ
慣れるためにも過去問題集は必ず解きましょう。
過去問を解くときは、第5問なら第5問だけを一気に解きます。
そうすると大体パターンが分かりますし、自分がミスするポイントも分かります。
ミスしたポイントは紙に書き出しておくと、自分がよく間違える箇所が分かります。
私は第3問や5問の過去問でよく「約束手形」と「小切手」の仕訳を間違えました。
つい「現金」ではなく「受取手形」に仕訳してしまうのです。
簡単と思った時(さらっと仕訳した時)ほど間違えています。
そのため繰り返しとなりますが、過去問を解いたときに間違えた理由、自分が勘違いしやすい仕訳は紙に書き出しておくことをお勧めします。
試験当日に試験会場へ向かうときに眺められます。
私は以下のようなものを作っておきました。
一部ですが。汚い字で申し訳ありません。
ブログ公開用に作り直す気力はありませんでした。
おすすめ過去問集の理由
過去問題集はたくさん出ていますが、私が実際に利用しておすすめする過去問題集は以下の記事で紹介しています。
おすすめする理由は、出題範囲から外れた部分(正確には配慮するです)が同レベルの出題範囲内の問題に改編されているからです。
単純に昔の出題範囲のままの(つまりこれから受験する回には出題されない)過去問を解くよりも効率的です。
詳細は以下の記事を見てください。
最新版はネット試験にも対応していますよ。
出題範囲は再確認しましょう
何事も相手を知らなければなりません。
2019年度(第152回試験)から簿記3級は試験範囲が改定されます。
その辺りの事情については、以下の記事で紹介しています。
思い切って、試験範囲から除外される部分は勉強しないという方法もあります。
現在の実務でも、なかなか行わないものが多いですから。
前述の過去問題集は、この辺が考慮されていますのでおすすめです。
仕訳が苦手なあなたに
どうしても仕訳が苦手という方、特に学生や社会人になったばかりの人は、商取引の(掛取引などの)イメージがしにくいと思います。
これは仕方がありません。
そのような時は以下の書籍がおすすめです。
前述の過去問題集を出版しているWeb型予備校「ネットスクール」の代表である
「桑原 知之」氏の著書
「脳科学×仕訳集 日商簿記3級 (合格するにはワケがある)」です。
仕訳集とありますが、仕訳だけではなく、簿記自体の考え方を学べます。
私の簿記の考え方はこの本に基づいています。
2021年3月に第3版が販売されています。
価格は2021年4月現在で1,320円(税込)です。
仕訳の仕組みから理解できますし、出題実績の高い順番に説明されていますので、効率よく簿記3級に必要な知識を学ぶことができます。
ちなみに掛取引とは後払いのことです。
波平がよく飲み屋の支払でしていたやつ(ツケといて!)と仕組みは同じです。
(最近テレビを見ていませんので、もうしていないかもしれませんが。)
企業間の取引は掛取引が基本です。信用商売ということですね。
終わりに
あなたの参考になれば幸いです。
それでは、また。
関連記事です。
「売上原価」同様、第5問の精算表で高頻度で出題される「貸倒引当金」の解き方です。
同じく第5問の精算表で高頻度で出題される「減価償却費」の解き方です。
日商簿記3級で使用する勘定科目の一覧を纏めました。
第1問の「仕訳問題」への対応方法、解き方のコツの紹介です。
第5問と同じ配点である第3問について具体的な解き方の紹介です。
試験全体について攻略法と問題毎の時間配分についても紹介しています。
試験までの段取りと前日、当日の過ごし方、タイムスケジュールも紹介しています。
間違えやすい誤字脱字を紹介しています。