こんにちは。シーナと申します。
「日商簿記2級」の受験を目指している私が、復習のために「日商簿記3級」の勉強を始めた時に感じた疑問や勉強したことを纏めていくシリーズです。
今回は、第5問の「精算表」に高頻度で出題される「貸倒引当金」の見積もりについてです。
これから簿記を受験するあなたの参考になれば幸いです。
- はじめに
- 貸倒引当金とは
- 貸倒引当金の仕訳とは
- 償却債権取立益とは
- 差額補充法とは
- 第5問の「貸倒引当金」の計算方法、解き方のコツ
- 過去問のすすめ
- おすすめ過去問集の理由
- 出題範囲は再確認しましょう
- 仕訳が苦手なあなたに
- 終わりに
- 関連記事です。
はじめに
第5問の「精算表」について全体的な解き方を紹介している
以下の記事を先にご確認ください。
貸倒引当金とは
得意先(よく買ってくれる相手)の倒産、夜逃げなどで、売掛金や受取手形が回収できなく
なることを貸し倒れと言います。
この貸し倒れを予め想定(見積もり)しておき、帳簿に計上するときに使用する勘定科目が
「貸倒引当金」となります。
どれだけ信用している相手でも想定外のことは起こりえます。
ちなみに資産のマイナス勘定(評価勘定)ですので、貸方で増えます。
注意としては、精算表では貸方に記載しますが、財務諸表では借方に記載します。
この辺は問題を解くことで慣れると思います。
借方、貸方、仕訳の覚え方については、以下の記事で紹介しています。
貸倒引当金の仕訳とは
決算時の仕訳
以下のケースを考えます。
シーナ商店の売掛金、受取手形の残高100,000円に対して、2%の貸し倒れを見積もる。
10万円の2%ですので、以下になります。
貸倒引当金繰入2,000 |貸倒引当金2,000
借方(左側):回収不能による損失額を当期の費用として計上しておきます。
費用の勘定科目である「貸倒引当金繰入」で処理します。
貸方(右側):まだ実際に貸し倒れは発生していませんので、売掛金や受取手形は
減らしません。専用の勘定科目である「貸倒引当金」で処理します。
実際に貸し倒れた時の仕訳
以下の2つのケースを考えます。
1.シーナ商店が売掛金を1,000円だけ残して夜逃げ。売掛金を回収できなくなった。
想定の範囲内だった時ですね。
仕訳は以下になります。
貸倒引当金1,000 |売掛金1,000
2.シーナ商店が売掛金を3,000円残して夜逃げ。売掛金を回収できなくなった。
見積もりをオーバーした時ですね。
仕訳は以下になります。
貸倒引当金2,000 |売掛金3,000
貸倒損失 1,000 |
貸倒引当金が2,000円しかないため、残りの1,000円は費用の勘定科目である「貸倒損失」で
処理します。
貸し倒れはタイミングが重要
貸し倒れが当期中に発生した場合は、「貸倒引当金」がいくら残っていても「貸倒損失」で
処理します。
なぜなら対象の収益も当期中に発生しているため、収益に対する費用として処理することが
簿記のルールだからです。
「貸倒引当金」から差し引くのは、前期末にあった売掛金や受取手形のときだけです。
前期以前の収益に対応する費用が「貸倒引当金」です。
この点は試験でもポイントになります。
問題文に「当期」の記載があったら「貸倒損失」です。
つまり、以下のようになります。
3.シーナ商店が当期の売掛金1,000円だけ残して夜逃げ。売掛金を回収できなくなった。
仕訳は以下になります。
貸倒損失1,000 |売掛金1,000
補足:2のケース(見積もりオーバー)の貸倒損失は、他にどうしようもないため、
仕方なく当期の費用として貸倒損失として処理します。
償却債権取立益とは
すでに貸し倒れとして処理していた債権が幸運にも回収できたときに計上する
収益の勘定科目です。
例えば、1,000円を現金で回収したとすると仕訳は以下になります。
現金1,000 |償却債権取立益1,000
償却には費用化という意味があります。
費用化した(貸倒損失で処理した)債権を取立したことによる収益ということです。
まあ、全額回収できることは、まずありません。
数年後に数%回収できればよいほうです。
償却債権取立益は第5問で出題されることはまずありませんが、こういうものがある
ということは覚えておいてください。
差額補充法とは
決算時に貸し倒れを見積もるときに、貸倒引当金に残高がある場合は、残高を踏まえて
見積額になるように金額を繰り入れる方法です。
貸倒引当金の残高が500円あり、見積額が2,000円だとすると
1,500円補充すれば見積額になりますので、
貸倒引当金繰入1,500 |貸倒引当金1,500
となります。
ここまでが基本的な考え方です。
以下から実際の出題を踏まえて、解き方のコツを説明します。
第5問の「貸倒引当金」の計算方法、解き方のコツ
第147回の問題を例にとって説明します。
日商簿記3級第147回問題文より引用。
3.売掛金の代金¥20,000を現金で受け取った際に以下の仕訳を行っていたことが判明したので、適切に修正する。
(借方)現金20,000 (貸方)前受金20,000
4.売掛金の期末残高に対して2%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。
出典:日商簿記3級平成28年度第147回簿記検定試験問題用紙
日商簿記3級第147回、答案用紙より関係する部分だけ抜粋します。
ポイント1:修正仕訳で対象の勘定科目が動いていないかチェック
まず問題文3の修正仕訳で売掛金が動きますので貸倒引当金の算出に影響が出ます。
このようなパターンが多く出題されます。
前述の記事でも紹介していますが、修正仕訳の時点ではまだ勘定科目は動く可能性がありますので、決算整理事項に入るまでは動かさないようにします。
問題文3の修正仕訳結果を反映すると精算表は以下のようになっています。
※修正記入欄(に限りませんが)は必ず貸借が一致します。
貸方(or借方)に20,000円記入すれば、必ず貸方(or借方)で20,000円が記入されます。
このルールを覚えておけば簡単になると思います。
念のため、問題文3の修正仕訳を敢えて書くと以下になります。
まず、
現金20,000 |前受金20,000
と間違っていますので、まずこの仕訳を貸借逆にして無かったことにします。
前受金20,000 |現金20,000
次に本来の正しい仕訳を考えます。
売掛金を現金で回収していますので以下になります。
現金20,000 |売掛金20,000
この2つを合わせると「現金」が貸借で打ち消し合って以下になります。
前受金20,000 |売掛金20,000
これを修正記入欄に記載します。
この一連の処理は「訂正仕訳」と言いますが、特に名前は覚えなくても大丈夫です。
これらは出来るだけ頭の中で出来るようになりましょう。
もちろん不安であれば、紙に書きだした方がよいです。
大して時間は掛かりません。
確実が一番です。
ポイント2:決算整理事項ではすぐに損益計算書や貸借対照表欄を埋める
必ず売掛金(と受取手形)が修正記入欄で動いていないか確認します。
今回は動いていますので、その金額を踏まえて、すぐに貸借対照表欄に記載します。
そしてその残高に対して、2%を計算します。
必ずすぐに貸借対照表欄に記入します。
精算表は以下のようになります。矢印の順に記載していきます。
「%」ボタンがある電卓が便利です。
ポイント3:精算表を埋める順番が重要
貸倒引当金の残高が3,000円あります。
貸倒引当金は5,000円ですので、この金額にするには貸倒引当金繰入は2,000円になります。
仕訳を書くとすると以下になります。
貸倒引当金繰入2,000 |貸倒引当金2,000
頭の中で仕訳は完成させて、矢印の順番に精算表を埋めていきましょう。
斜めの矢印が使えなかったので分かりにくいかもしれませんが、前受金は関係ありません。
念のため。
この流れ、段取りで精算表を埋めていきます。
繰り返しとなりますが、決算整理事項に入ると、それ以上は対象の勘定科目は動きません。
修正記入欄には配点はありませんので、すぐに損益計算書や貸借対照表欄を完成させます。
そして次の問題に移ってください。
後はひたすら問題を解いて慣れることです。
過去問のすすめ
慣れるためにも過去問題集は必ず解きましょう。
過去問を解くときは、第5問なら第5問だけを一気に解きます。
そうすると大体パターンが分かりますし、自分がミスするポイントも分かります。
ミスしたポイントは紙に書き出しておくと、自分がよく間違える箇所が分かります。
私は第3問や5問の過去問でよく「約束手形」と「小切手」の仕訳を間違えました。
つい「現金」ではなく「受取手形」に仕訳してしまうのです。
簡単と思った時(さらっと仕訳した時)ほど間違えています。
そのため繰り返しとなりますが、過去問を解いたときに間違えた理由、自分が勘違いしやすい仕訳は紙に書き出しておくことをお勧めします。
試験当日に試験会場へ向かうときに眺められます。
私は以下のようなものを作っておきました。
一部ですが。汚い字で申し訳ありません。
ブログ公開用に作り直す気力はありませんでした。
おすすめ過去問集の理由
過去問題集はたくさん出ていますが、私が実際に利用しておすすめする過去問題集は以下の記事で紹介しています。
おすすめする理由は、出題範囲から外れた部分(正確には配慮するです)が同レベルの出題範囲内の問題に改編されているからです。
単純に昔の出題範囲のままの(つまりこれから受験する回には出題されない)過去問を解くよりも効率的です。
詳細は以下の記事を見てください。
最新版はネット試験にも対応していますよ。
出題範囲は再確認しましょう
何事も相手を知らなければなりません。
2019年度(第152回試験)から簿記3級は試験範囲が改定されます。
その辺りの事情については、以下の記事で紹介しています。
思い切って、試験範囲から除外される部分は勉強しないという方法もあります。
現在の実務でも、なかなか行わないものが多いですから。
前述の過去問題集は、この辺が考慮されていますのでおすすめです。
仕訳が苦手なあなたに
どうしても仕訳が苦手という方、特に学生や社会人になったばかりの人は、商取引の(掛取引などの)イメージがしにくいと思います。
これは仕方がありません。
そのような時は以下の書籍がおすすめです。
前述の過去問題集を出版しているWeb型予備校「ネットスクール」の代表である
「桑原 知之」氏の著書
「脳科学×仕訳集 日商簿記3級 (合格するにはワケがある)」です。
仕訳集とありますが、仕訳だけではなく、簿記自体の考え方を学べます。
私の簿記の考え方はこの本に基づいています。
2021年3月に第3版が販売されています。
価格は2021年4月現在で1,320円(税込)です。
仕訳の仕組みから理解できますし、出題実績の高い順番に説明されていますので、効率よく簿記3級に必要な知識を学ぶことができます。
ちなみに掛取引とは後払いのことです。
波平がよく飲み屋の支払でしていたやつ(ツケといて!)と仕組みは同じです。
(最近テレビを見ていませんので、もうしていないかもしれませんが。)
企業間の取引は掛取引が基本です。信用商売ということですね。
終わりに
あなたの参考になれば幸いです。
それでは、また。
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