こんにちは。シーナと申します。
「日商簿記2級」の受験を目指している私が、復習のために「日商簿記3級」の勉強を始めた時に感じた疑問や勉強したことを纏めていくシリーズです。
久しぶりの今回は、第2問もしくは第4問のテーマとして意外と出題される「商品有高帳」についてです。
2020年1月現在の直近では、第151回と第153回の日商簿記3級試験で出題されています。
当記事では、日商簿記3級の商品有高帳における移動平均法と先入先出法の違い、商品の返品、値引きを含めた解き方のコツを紹介しています。
これから簿記3級を受験するあなたの参考になれば幸いです。
- 日商簿記3級の商品有高帳(しょうひんありだかちょう)とは
- 商品有高帳の記帳方法は先入先出法と移動平均法がある
- 日商簿記3級の先入先出法とは
- 日商簿記3級の移動平均法とは
- 商品有高帳の先入先出法と移動平均法の記帳の違いとは
- 商品有高帳の締め切り
- 日商簿記3級の商品有高帳の返品や値引きについて
- 日商簿記3級「商品有高帳(移動平均法)」の出題パターン
- 日商簿記3級の商品有高帳(移動平均法)問題の解き方(コツ)まとめ
- 最後の仕上げに過去問題集のすすめ
- 日商簿記3級は独学で取得できるのか?
- 終わりに
- 関連記事です。
日商簿記3級の商品有高帳(しょうひんありだかちょう)とは
ある商品の在庫管理表のことです(商品ごとに商品有高帳があります)。
商品の在庫を管理するための物ですから、経理担当者や営業担当者が記帳(記載)するのではなく、在庫管理担当者が記帳します。
重要なポイントは、商品有高帳に記帳する商品の単価は、原価のみであるという点です。
実際に商品を販売する売価・売値ではないということです。
(問題文に出てくる売価・売値を記帳した時点で間違いになります。)
我々は在庫管理者となる訳ですから、その商品をいくらで実際に販売しているのかということは関係ない話ですよね(大企業はタテ割りです)。
その商品は、何個をいくら(原価)で仕入れて、いくつ払出しして、もしくは戻って来て、現在いくつ倉庫に残っているのかが分ればよい訳です。
商品有高帳の記帳方法は先入先出法と移動平均法がある
日商簿記3級では、商品有高帳の記帳方法(管理方法)には、以下の2つがあります。
- 先入先出法(さきいれさきだしほう)
- 移動平均法(いどうへいきんほう)
従って、この2つを理解する必要があります。
ただ、最初に言ってしまうと日商簿記3級の商品有高帳を作成させる問題では、移動平均法の場合しか(おそらく)出題されません。
ですので時間に余裕が無い場合は、移動平均法を重点的に勉強した方が効率的です。
ということで、当記事でも移動平均法をメインに解き方を紹介します。
ただし、先入先出法ももう一つの出題パターン(後述しています)の場合は関係することがありますから考え方は理解しておく必要があります。
(直近では第151回に先入先出法を知らないと解けない問題が出題されました。)
ポイントを押さえれば商品有高帳はサービス問題になります。
出題されたらラッキーと思いましょう。
ちなみに実務では、取り扱う商品によってどちらかの方法を選択します。
日商簿記3級の先入先出法とは
さて、まずは先入先出法です。
名前から想像がつくと思うのですが、先入先出法は先に仕入れた商品を先に出す(販売する)管理方法です。
逆(商品が戻ってくるパターンの時)も同じ考え方で、最後に出した商品を先に戻します。
ポイントは、仕入れた時の仕入単価(原価)と数量ごとに商品を管理することです。
(同じ商品でも原価は日々変わります。)
つまり、同一の商品でも1取引が複数行になるということです。
一般的には食品(賞味期限や使用期限がある商品)などの場合に採用します。
最初に仕入れた商品を先に売っていかないと賞味期限が切れて廃棄することになってしまいますね。
コンビニやスーパーの棚で賞味期限が近いものが前に並んでいるのと根柢にある考え方は一緒です(違うかも)。
日商簿記3級の移動平均法とは
次に、メインの移動平均法です。
こちらは仕入れごとに在庫の商品の原価との平均値(平均単価)を算出して管理します。
そのため、必ず1取引(1商品)が1行になります。
一般的には使用期限が無い商品(鉄鋼とか貴金属とか株とか)で採用します。
それで、なぜ日商簿記3級の商品有高帳を作成する問題では先入先出法は出題されないのかですが。
大人の都合です(^^
というのは半分冗談で、試験にすると採点が難しいからです。
先入先出法は同じ商品でも仕入単価毎(原価毎)に管理しますから、1取引が複数行になります。
そうなると人によっては書く順番が違ったりすることもありえますから、採点するときに都合が悪い(面倒)という訳です。
ただ、あくまで採点が面倒だというだけで不可能ではありませんから、絶対に出題されないということではありません。
それに先ほども触れましたが直近では第151回の試験で、先入先出法の考え方を知らないと解けない問題が出題されています。
繰り返しとなりますが、時間に余裕があるのなら両方勉強した方がよいですよ。
それでは先入先出法と移動平均法の違いをもう少し詳しく説明します。
商品有高帳の先入先出法と移動平均法の記帳の違いとは
以下のようなA商品に関する商品有高帳があるとします。
前月からの繰り越しとして、単価100円で仕入れたA商品が10個ある(在庫がある)ことが分ります。
この状態から以下のような取引をしたとします。
1月10日:仕入、A商品10個@110円
1月20日:売上、A商品15個@150円
「@(アットマーク)XXX円」は1個当りXXX円という意味で実際の試験でもこのように表現されます。
先入先出法の場合
まず、先入先出法では以下のように記帳します。
仕入単価(原価)ごとに行を別けて記帳していますね。
そして売上の単価も原価で2行に別けて記帳します。
15個売上げていますから、後から仕入れた110円の商品が5個残るということです。
先に入れた(仕入れた)商品から先に出す(売上げる)ということですね。
それとちょっと分かりにくいかもしれませんが、数量の横に「{」のような記号を書いています。
これは同じ日の一つの取引であることを示しています。
先入先出法はそもそも出題されないと思いますし、仮に出題されたとしても採点に影響があるのか分かりませんが、一応このように書くものと思ってください。
移動平均法の場合
次に、移動平均法では以下のように記帳します。
こちらは1行に纏めて記帳しています。
「単価」は「数量」と「金額」の合計から計算してから記帳する必要があるため、ひと手間掛かります。
ただ、売上の時はシンプルになりますね。
単価は1つですから単純に数量を掛ければ金額が出ます。
さて、大体のイメージは掴めましたでしょうか。
管理方法の考え方の違いと、商品有高帳の単価には原価を記帳するということをしっかりと押さえておけば、非常に簡単ですよね。
ちなみに「摘要(てきよう)」欄は、摘要(要点の抜き書き)ですから自分が分ればよいため(外部に公開する資料でもありませんからね)、どのように記帳しても間違いには出来ません。
そのため試験の採点個所にはなりにくいです(絶対とは言いませんが)。
あまり気にせず、常識的な範囲で書いておけば大丈夫です。
商品有高帳の締め切り
商品有高帳を締めるとき(次月に繰り越す時)は以下のように記帳します。
移動平均法の場合を例にしていますが、先入先出法でも同じです。
最終行の受入欄と払出欄で数量と金額が一致するように次月繰越を記帳することがポイントです。
単価は記帳しません。
次月繰越(の行)には、月末の在庫(残高欄の最終行)にあるそれぞれの数値をそのまま記帳します。
日商簿記3級の商品有高帳の返品や値引きについて
商品有高帳を作成する際に少しだけややこしくなる点は、仕入戻しや返品等の処理になります。
ただ、これは問題文に必ず(どの欄に記帳するかの)指示があります。
というより指示が無ければ記帳できません(採点できません)から、それに素直に従うだけです。
大抵は「受入欄」に記帳させられます。
(売上原価を計算するときに忘れないようにしましょう。特に問題文に指示が無ければ払出欄にマイナスで記帳しても間違いではないのです。)
なお、売上値引きは引っ掛けというか、間違い易いポイントです。
売上の値引き、つまり利益部分の修正ですから原価には一切関係がありません。
(在庫管理者としては、すでに払い出した後の商品ですから関係ありません。)
そのため商品有高帳には売上値引き(の取引)は記帳しません。
最初にお伝えした通り、商品有高帳は原価のみを記帳するということでも分かりますね。
日商簿記3級「商品有高帳(移動平均法)」の出題パターン
さて、具体的にどのような問題が出題されるかですが、以下の両方が出題される形式が現在の主流です。
・商品有高帳を(移動平均法で)完成させる問題
・純売上高、売上原価、売上総利益を答えさせる問題
商品有高帳を完成させる問題だけではサービスがすぎるということですね。
ただ、それだけでも4点から6点ぐらいは配点されます。
しっかりと得点を回収しておきたいですね。
純売上高、売上原価、売上総利益の求め方ですが、例えば先ほどの取引では以下のようになります。
移動平均法の場合です。
純売上高:2,250円
売上原価:1,575円
売上総利益:675円
以下のような取引でしたね。
1月10日:仕入、A商品10個@110円
1月20日:売上、A商品15個@150円
移動平均法の場合です。
純売上高:2,250円
1月20日に1個150円で15個売っていますから150×15=2,250です。
※売上高を求める時に初めて売価・売値(ここでは@150円)が関係します(売上高は問題文だけからしか分かりません)。
商品有高帳を作成するだけなら営業担当者がいくらぼったくっているのかは関係ないということです。
売上原価:1,575円
販売した商品15個の原価は105円ですから原価は105×15=1,575です。
要するに「払出欄」が原価になります。
ただ、返品処理等が大抵は問題に含まれます。
その場合は受入欄に記帳しているはずですから、その分を引くことを忘れないようにしましょう。
ポイントはそれぐらいです。
売上総利益:675円
利益は売上高ー売上原価です。
従って、純売上高、売上原価、売上総利益を答えさせる問題の配点は1個2点として、4点になると思います。
売上原価(もしくは純売上高)を間違えていると売上総利益も間違えますからね。
ちなみに、先入先出法の場合は、売上原価が変わりますから売上総利益も変わることになります。
同じ商品、同じ取引なのに管理方法が違うだけで結果が異なってもよいのかと思うかもしれませんが、一定の管理方法に則って、適切に管理していればそれでよいのです。
(同じ商品を複数の方法で管理するのはもちろんNGです。)
日商簿記3級の商品有高帳(移動平均法)問題の解き方(コツ)まとめ
以下のポイントをしっかりと押さえておけば、商品有高帳の問題はサービス問題になります。
これらの点を意識して、過去問題集を解いてみてください。
- 商品ごとに存在する
稀に問題文に別の商品の取引が記載されることがあります。どの商品の商品有高帳か意識しましょう。 - 原価のみ記帳する
- 売上値引きは記帳しない
なぜなら利益部分の修正だからです。 - 1取引1行
- 返品や仕入戻しなどの処理方法は問題文に従う
商品有高帳の問題はこれらのポイントを踏まえて、いくつか過去問題を解けば、すぐに理解できると思います。
最後の仕上げに過去問題集のすすめ
以下の記事で私が実際に使用したおすすめの過去問題集を紹介しています。
おすすめしている理由は、出題範囲から外れた部分が同レベルの出題範囲内の問題に改編されているからです。
単なる過去の問題を纏めただけの問題集ではありません。
単純に昔の出題範囲のままの(つまりこれから受験する回には出題されない)過去問を解くよりも効率的です。
簿記初心者の私でも効率的に勉強することが出来た良書です。
試験の10日前ぐらいから過去問題集に取り組みたいです。
結局、おすすめの過去問題集を解くことが合格への近道と思います。
日商簿記3級は独学で取得できるのか?
もしもあなたが独学にするか、通信講座を利用するか迷っている場合は、以下の記事を見てみてください。
必要な勉強時間、勉強方法などあなたの参考になる情報も一緒に紹介しています。
終わりに
あなたの参考になれば幸いです。
それでは、また。
関連記事です。
商品有高帳は同じく第2問(もしくは第4問)で出題される「補助簿の選択」問題にも関係します。
同じく第2問(もしくは第4問)で出題される「伝票会計と仕訳日計表」問題の解き方の紹介です。
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